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空前の超ヒット作『君の名は。』の感想と考察【ネタバレ有り】

昨日久々に友人と会ったついでに行き当たりばったりで映画を見に行こうという話になり、超ヒット映画『君の名は。』を見てきました(実は2回目)。


「君の名は。」予告

1回目は普通に見に行って感想も「面白かった」くらいしかなかったので特に書こうとは思わなかったのですが、折角なので2回目は約165億という興収を叩き出してるのはなぜなのかの部分を考えつつ見ることにしたので、その感想と考察や超ヒットした理由を書いていこうと思います。

 

①感想・考察

結論から言うと「映像作品としての作家性の改革を実現した作品」というのが個人的な感覚です。

 〇キャラクター

 『君の名は。』のキャラクターは、ポストジブリとマスメディアで言われてはいますが、影響は受けているとは言え躍動感やアニメーションとして完成度は高いと思います。また、主人公の立花瀧(たちばなたき)と宮水三葉(みやみずみつは)を中心とした友人関係を含め都会と田舎のそれぞれの雰囲気が出ていて、田舎者と都会者の入れ替わりでのあたふた感はなかなかいい演出でそれぞれの性格がよく描かれていますね。

 瀧くんは見ていてやっぱり思春期の男子なんだなとか、やっぱりお約束やっちゃうんだなとか、恋愛には奥手な感じなんだなとかありましたが、都会の学生とかの標準的な生活環境とかよく描かれていたと思いますね。三葉ちゃんの方は、田舎コンプレックスと立場からの同級生のやっかみを受けてたりと、どちらかというと閉鎖的な部分が描かれてはいましたが、その中で生きる人々はどういう生活をしているのかをちゃんと描写されていたと思います。(特に家の中の有線放送なんかは田舎を知っていないとちゃんと描かれない場合が多い)

 〇ストーリー

 様々他の方の伝聞意見は一旦ここでは置いておくとして、ストーリーの展開として入れ替わりのドタバタから入れ替わりに気づいてからのお互いのやり取りで笑って見られる部分があったり、運命的な入れ替わりを体験することによって無意識下でお互いを意識していくという描写、入れ替わらなくなる時の脳を打つような金属音と再度入れ替わる時に繋がる糸と同様の金属音なんかは「赤い糸」や「運命」などを連想させてくれるロマンチックな描写でした。

 他にも、「片割れ時」「彼岸」「(糸を)繋ぐ」などの様々なストーリーを構成する重要ワードが出てきたり、主人公の瀧くんが描く風景画が糸守町の風景が記憶が無くなっても魂に刻みつけられているような描写になっていたりしますが、海外でも評価される映像美の背景描写も含めてロマンチック性の高いストーリー展開になっていたと思います。

 〇演技

 今回の『君の名は。』は、メインを俳優さんでサブを声優さんという構成でしたが、従来のジブリさんの「素人っぽさ」を前面に押し出した作品ではなく、真逆の声で感情を表現するという声優本来の演技部分に重点を置いていて、個人的には「演じる」という面で声の表現について完成度が高いと思います。とは言え、元々俳優さんも演技という面では声優さんと重なる技術の部分ではありますから、実際には想像通りといえば想像通りだったのですが、声の演技に特化した声優さんと同等の演技力を発揮した神木隆之介さん、上白石萌音さん、長澤まさみさんは流石でしたね。

 〇演出

 全体的にリズム感というかサウンドに乗せた疾走感のある部分と通常テンポの部分とが合わさった新しい感覚のアニメーション作品という感じでしたね。評論家の方の中には「ミュージッククリップ」と評する方もいらっしゃるようですが、個人的にはああいう疾走感も含めての演出だと感じました。サウンドに乗せた部分でも十分何が行われてるか読み取れましたし、映像作品として変に長々と説明するよりもアニメーションとサウンドで演出して「魅せる」というタイプのいいまとめ方をしていたと思います。

 また、新海誠監督の作家性はストーリーよりも映像に出るものだと個人的には感じましたが、映画などの映像作品というのは「映像で魅せる」というのが本質なんだと感じさせてくれるような衝撃をもたらしたのがこの作品の意義かなと思いました。個人的にはもちろんストーリー性のある作品が嫌いというわけではなく、むしろジブリさんでは『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』とか、オタク的な面では『AIR』『Kanon』『CLANNAD』とかで感動していた方の人なんですが、「ストーリーで感動する」という作品ではなく「映像に魅せられる作品」という意味で映像演出に特化した作品だと思いました。(もちろん1回目の時はめちゃくちゃ感動したんですがw)

 〇総括

 殆どは上の方で書きましたが、この作品はストーリーに価値を感じる方にはあまり魅力的に感じられない作品なのかもしれませんが、映像面との演出との繋がりや劇中に出てくる単語の意味を繋げればロマンチックな「魅せる」作品だと思います。私は特に新海誠さんの熱烈なファンという訳ではないのですが、2回目に細かいところまで見て新しいタイプの映像作品だと思いました。よく見れば、ストーリー性がないわけでもないですし、個人的な感覚では映像演出に特化した作品なので、ストーリー性に重点を置いた見方だとこの作品の本当の魅力というのは感じられないのかなという感じですね。

 また、これは超個人的な一般目線の感想となってしまいますが、この作品から感じられたメッセージ性は「今一度ロマンチストになってみよう」というもののような気がします。現実社会では、色々未来への不安や上手く行かない劣等感などを感じるストレス社会で、ただただ夜空の星の綺麗さだとか美しい風景を楽しむということをもう少し考えてもいいんじゃないかと、そう思わせてくれるような作品でした。

 

②『君の名は。』が超ヒットした理由

さて、ここまで具体的な感想や考察をさせて頂きましたが、私も一応クリエイター目指してる人間として、何故この作品がこんなにも超ヒットしたのかを考えてみました。

  1. 映像美を最大限に利用した映像演出とサウンド
  2. 運命を感じさせるロマンチックなシナリオ
  3. 躍動感のあるキャラクターアニメーション
  4. 俳優起用による話題性と視聴者の口コミ

大分してこの4つの要素が主に若年層を中心に大衆ウケしている理由かと思います。特に色々なレビューを見たりしていると一番多いのがやはり1で「映像が綺麗だった」という感想が高評価の大多数で、つい最近のロンドン映画祭の記者のレビューでもやはり映像について高評価を受けていることから、視覚的に「魅せられている」というのがこの映画の評価点の高さと言って良いんじゃないかと思います。

逆に評価の低いコメントでは「ストーリーに共感できなかった」「細かいことが気にならない人は楽しめる映画」とかどちらかといえばストーリーに関しての矛盾点などを指摘されている方が多いのかなという印象です。

つまり、「ストーリー重視の方には向かないが映像作品としての楽しみ方ができる人には受け入れられる」というか、視覚的な綺麗さに関してはやはり「美術性」という面で海外でも評価される通り、この作品の本質は映像を中心とした「映像美術演出」という新しい価値観を取り入れたもので、ポテンシャルとしては日本国内のみならず海外でも一定の評価を期待できる作品ではないかと思うのです。

ストーリーには評論家の方々含めた業界の方の酷評が集まる一方で、一般の方には「とにかく映像が綺麗だった」という感想を持たせ、何度も足を運ばせる「美術的価値」を付加された作品を生み出したのが興収約165億を叩き出した理由ではないかと個人的には考えています。

 

筆末になりますが、こういったものを自分で作れるかと言われれば「No!!」とはっきり言える作品ですが、これからの映像作品(特に映画のような巨大スクリーン映えする作品)というのはこういった「美術的価値」というものも視野に入れて制作していくことが広く受け入れられる一つの指標になるのではないかと思います。